この記事では、2020年7月に発表された米移民税関捜査局のビザ発給規制について詳しくご紹介していきます。
米移民税関捜査局のビザ発給規制
アメリカの米移民税関捜査局(ICE)は2020年7月6日、2020年9月以降の新学期からオンライン授業のみを受講する留学生にはビザを発給せず、アメリカへの入国も認めないと発表し、留学生は対面授業を取らない限りアメリカでの滞在ができないとされていました。
しかし7月14日、マサチューセッツ州の連邦地方裁判所はトランプ政権が今回のビザ制限を撤回したと報告しました。
ハーバード大とマサチューセッツ工科大がトランプ政権を提訴
2020年7月8日、名門大学であるアメリカのハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)は、今回のビザ発給規制を行わないようにするために訴訟をボストン連邦地方裁判所に起こしました。
訴状では「今回のこの発表は対面授業によるアメリカ政府の強制的意向が反映されたものだ」と述べており、トランプ政権を非難していました。
多くの大学でオンライン化
アメリカの多くの大学では新型コロナウイルス感染症の感染防止策として全ての授業を、または授業の大半をオンライン化するなどの移行をみせています。
ハーバード大学では秋からの新学期の講義を全てオンラインで実施すると表明しています。
大学側にも大打撃の可能性があった
今回のビザ発給規制が行われたらアメリカの大学側にも大きな影響を及ぼすことになったでしょう。
アメリカには毎年、多くの留学生が多額の授業料を大学側に支払って渡航しており、米商務省によると、2018年に留学生はアメリカに計450億ドル(約4兆8000億円)の経済効果をもたらしたと報告されています。
日米教育委員会によると、アメリカの大学・大学院に在籍する留学生総数は約109万人で、全米大学生数の5.5%を占めています。
また、留学生が支払う授業料は米国人よりも倍以上に多いため、ビザ発給規制によって留学生の入学者の数が大幅に減ってしまった場合や退学者が多くなった場合、アメリカの大学側は収入の面で大きなダメージを受ける可能性があったのは確かです。
対面授業とオンライン授業のハイブリッド
アメリカの大学側は収入が減ってしまう・留学生を帰国させない対策として、対面授業とオンライン授業を組み合わせるハイブリッドモデルを検討しています。
カリフォルニア州立大学バークレー校では留学生のために対面式の特別講義を開く予定です。
トランプ大統領やニューヨーク市長が反応
ニューヨーク市の市長であるビル・デブラシオ(Bill de Blasio)は今回の留学生の措置について以下のようにTwitterで反応しています。
Think of all the progress immigrants have brought to our country. Now think of all we’ll lose due to this heartless move.
Think of the future doctors who won’t discover vaccines. Think of the future leaders who will be denied an education.
Despicable. https://t.co/OyH5UZpJ3J
— Mayor Bill de Blasio (@NYCMayor) July 7, 2020
デブラシオ市長は、「今回のICEの決定により多くの留学生がアメリカを離れてしまうことは、将来ワクチンを開発する医学博士や未来の指導者になれる人材に教育を与えないことを意味する」と書いています。
トランプ元大統領は以下のようにTwitterで反応しています。
SCHOOLS MUST OPEN IN THE FALL!!!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) July 6, 2020
トランプ元大統領は「秋に学校(対面授業)は再開するべきだ!!!」と投稿し、秋の新学期に対面授業の再開を強く望んでいることがわかります。
このツイートからトランプ元大統領は「社会活動や経済を早く再開させたく、学校側に圧力をかけている」との見方もあります。
また、トランプ元大統領が学校に通う子供達のコロナ感染リスクを真剣に考えているとは言い難いです。